連作

『先生、授業サボって今からデートに行きませんか?』

なんて声をかければいいのか分からないくらい桜が教室中に

動物園、公園、天王寺のホーム、あなたとただ手を繋ぎたかった

漢文がすげー面白くはならないけれどずっとあなたを見てた

髪染めていいんだ 先生のくせに最初はそれだけだったのに なぜ

相談する事すら浮かばず学食できつねうどんの大盛りを食う

重そうに籠バックを持つ 後ろから追いかけたくてたまらなかった

泣きながら大切な事を言っていた それがやけに可愛かった

変な人だったと思う 年上のくせに雑貨の話ばっかり

先生に恋人はいますかなんて女子高生なら聞けたのだろう

携帯も無い時代の恋だから 必死でカワイイ便箋巡り

非常勤講師の立場の危うさを中学教師の友達に聞く

そういえば苗字も忘れたけど白いニットが似合う人だったよね

またどこか桜がいっぱいある場所でこの人かなって勘違いする

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連作「メリークリスマスと言えない彼女も言える彼女も」

メリークリスマスと言えない彼女も言える彼女も

クリスマスだから進んで出勤に丸を付けたわけでもないです

手をのばせ それに届かなくっても笑い声なら宇宙の彼方

酔っ払い、八百屋のおじさん、サンタさん クリスマスくらい放っておいて

瞬いているのだろうかあたしたち寄り添うように家路を急ぐ

きょうバイト終わってタイムカードを押すと日付が変わってええっとそれで

「おばあちゃん、サンタクロースもAmazonでPS3を買ったのかなぁ」

君が今大事な人と居る街をグーグルアースでソリから見てるよ

「本当に見たんだ銀河鉄道を」新米車掌の最後の日報

プレゼントなんていらないから今夜あたしのことを二秒想って

ねえ君の国のサンタはふわうって煙草をふかしてやってくるの

煙突に上るあいつを蹴落として君の寝顔を奪いに行きます

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連作「前髪を揺らす程度の風」

前髪を揺らす程度の風

前髪をぱつんと切ってもうあたし風が吹いても目をつぶらない

キスにがて 好きとかきらいじゃなく にがて うまいへたとかじゃなくてにがて

泣き虫を飼いならしている女の子 それに餌をやる男の子

明るいの苦手なのってサングラス どうやらこの子もドラキュラらしい

ああ、あれは違う世界の女の子 倒れるようにお辞儀をします

森ガール可愛いねってこの森に閉じ込めたのはあなたでしょうが

②を出せば振り出しに戻る もう一度遊びに行こうと笑ってほしい

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連作「森ガールは帰れなくなった」

「森ガールは帰れなくなった」

伐採を繰り返したからかえれない 元、森ガールはサバンナを行く

牛乳を満タンにした壺みたい 女の子にだけ憧れています

もし君が窓辺のカンテラ揺らすならあたしは今すぐコートを着るよ

乾きやすい女の子だからよつばが少し混ざった地面に倒れています

手渡しで届くといいな 切手のところにあたしの写真を貼っておくから

君がよく褒めていたあのカップケーキのドライフルーツによく似ているね

星が降る夜はせめて君とじゃなくて一人で迷子になりたいのです

はちみつが枯れないように足していくおばあちゃんと呼ばれてもまだ

振り向けば手を振っている ああ あれは私が狼と一緒だったころ

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連作「オリジナル・キャラメル・フレーバー」

「オリジナル・キャラメル・フレーバー」

今時の若い子だったこともある 挑戦できないメイクが増える

知るだろう ストッキングの限界を無視して走る女の子の意地

終わるのか始まるのかがわからないファミレスであたし漂流中です

こんなにも疲れた顔の女でも胸の谷間は営業するのか

おととしの桜よ見ていて今年こそあたしはあたしを探しきるから

ああ君も課長と呼ばれる前の日は何度も夜明けを眺めてたのね

頑張っているのはわかる 頑張って疲れているのもわかる二年目

結婚の資金にするか明日への活力にするかボーナスよこせ

帰ったらビールが待ってる それだけで慣れた夜はふんわり寂しい

のうのうと生きていきます泣いたら負けだとどこの馬鹿が呟いたんだ

今日もまた満ち足り欠けたりタリーズで課長の文句割りミルクティー

ヴァージニアスリムが似合いだしたのは上目づかいを身につけたから

変わり者と言われることしか独り立ちできないあたしのキャラメルフレーバ

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連作「夏が来るのは嫌だけど梅雨が続くのはもっと嫌な女の子のために」

夏が来るのは嫌だけど梅雨が続くのはもっと嫌な女の子のために

向かい側 駅のホームで笑ってるあなたの隣の私の宿敵

どうしたらあの子のように思いきりミニスカートで飛べるのだろう

あの子より男を知らない スカートの長さなんかで決められたくない

本当は幸せになるつもりなどむちゃくちゃあるけどいちいち言わない

あの人の事が好きだと言えるのは幸せそうな彼女がいるから

今何時?なんてあたしに言わないでたぶん嘘しか出てこないから

一度だけ相合傘を口実に近づいたことがありましたよね

何だっていいから君に誉めてほしい  あたしの口癖まねしてほしい

気づいたら標識だらけ また君に行くまで時間がかかりそうです

手のかかる女の子です aikoとか好きですあとチョコレートとか

誰からも祝福されない恋をしてその後いつか結婚したい

今すぐにあの子に言いたい あの人のどうでもいい癖見つけた事を

抱きしめてくれるというなら無茶もする白線を今飛び越す女子たち

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連作「疑似歩行」

疑似歩行

息継ぎを忘れてこのまま朝になる波打ち際の髪の手触り

偶然を忘れてただの人になる奇跡によく似た君の過呼吸

空中に散らばっていく導火線それは朝の満員電車

伝染を怖がりながらも会話する失くしたはずのぬいぐるみの目

ここからは歩いて行こう吉野家はそれでも夜明けを迎え撃つから

本能で夜明けを感じる時限式爆弾と化す誰も彼もが

妖精が手すりにもたれかかってもそれでも僕は蜂蜜舐めるよ

蛇口には二人の匂いが染みついてどこまで行けるか試されていた

今日もまた誰かの死体を迎えてる葬儀場の君が見た夏

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連作 童心術

童心術

坂道を転がっていく 持ち主を突然失った三輪車

見たこともない蝶でした 不規則な螺旋の先のあなたのまつげ

その正体が何なのかを知りたくて手を伸ばすことを忘れた僕ら

争いがあるだけ 見栄も隠しごと一つもなくただ投げ合う雪だま

反射する水たまりの複雑な色 君と二人で聞いてた雨音

僕らがそう大人になったら忘れるであろう替え歌みたいな夕暮れ

一秒も無駄に出来ないことだけが僕らの使命だから走った 

遊び続けている誰も呼びに来ない原っぱから来るあの世の音色

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連作:「空耳であるように」&お知らせ

空耳であるように

「一晩中、君のはなしを聞くからさ」なんて言うからなんにも言えない

消化試合みたいなデートを繰り返し繰り返しする午後二時のカフェ

実は今日あたしの誕生日なんだよって嘘でもいいから言えばよかった

ブサイクなやつほどむやみに優しくてブサイクだから手加減もへた

女ってだけでこんなに疲れてる また失敗した生クリーム

雨宿りしている君を抱きしめて通報されちゃう国に住んでる

くすぐってあげるよ アタシには君の苦笑いで十分なんだ

それはそれは ぶきような ふたりでした ぎゅってしたら そのまま きえた

ちょっとお知らせします。

新時代を切り開く短歌誌「ivory」のレビューを寄稿しています。

http://tankaivory.blog19.fc2.com/blog-entry-32.html#tb

皆様、どうぞ一冊手にとって見てください。

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連作「チョコレート・マルシェ」

「チョコレート・マルシェ」

女子高生たちを見送るあたしにもあんな時代があったはずで

小さくて言い訳ができないくらい一番切ないチョコを君に

彼氏にはこのチョコにしよう良くできた方はあの人に届けよう

あげる人はいるけどそんなんじゃなくてデパ地下だけは迷わずに行く

あんな小さな女の子もチョコを買う 左手のチョコが本命だよね

粉雪の隙間からでもはっきりとわかるチョコのかたちのあたし

君が好き あの人はうーんなんだろう チョコレートケーキを指で倒す

世の中にある全てが「大丈夫」でもあたしの気持ちは雲のうえに

気の迷いなんかじゃないけど君といることを選んだそれだけなんだ

何も知らないでいてね このまんま変わらずあたしを好きでいてね

ちょっとでも君に食べてほしいからチョコブラウンに染めてみたんだ

あたし多分この人と結婚します チロルチョコをくれた君と

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